ひたすのなかの島々

30代の独身男性が投資信託積立と貯金箱とαを綴る。最近は英語勉強記録になりつつあります。

加賀隆一著、プロジェクトファイナンスの実務(旧版)

こんにちわ、ひたすです。

いい加減辞めたくなってきている現職ですが、久々にプロジェクトファイナンス(以下、プロファイ)を仕事としてやっているので、久々にプロファイの本を押入れから引っ張り出してきて、読みました。

 

多分、プロファイに初めて関わる人なら、大抵の人は「これ読んどけ」と言われる入門書的なやつかと思います。

こういう本が会社に買ってあったり、紹介してくれるケースはいいんですが、会社によっては、「プロファイなんて経験だ!概説書なんていらん!!」ていう上司も結構いる気がします。

確かに、それはそれで正しいのですが、プロファイのフレームワークや一連の流れはどのプロジェクトにおいても似ているところがあるので、体系的な知識は後々役に立ちます。

 

 

 

 

 

 

 

私も現職について、プロファイの復習がてらに読んでいて、いくつか本を購入したので、気づいたのですが、この本、新板が2019年に出ていて、上記で挙げているこの本は旧版という扱いらしい

新版が出てから、一気に中古市場の価格が暴落して、1000円台まで下がっているのは驚きました。。普通に私は定価の4000円強で買ったんですが。。5年くらい前ですが。

 

新版のほうがページ数も増大しています。

 

旧版ページ数:323p

新板ページ数:456p

 

となっています。

 

まぁ、このあたりの内容の違いは追々書かせていただきますが、プロファイとはなんぞやという話ですよね。

ただ、この書評自体が私の備忘録的な意味合いですし、私は専門家でもなく、ただの実務者でしかないため、詳しい説明は省きますが、この本から抜粋すると、

 

「①特定されたプロジェクトが対象で、原則として②主たる返済原資が当該プロジェクトのキャッシュフローに依拠し、かつ③担保が当該プロジェクトの資産に限定されるファイナンス」(加賀、2007、プロジェクトファイナンスの実務、pp5)

 

今でこそ、国内であれば再生可能エネルギーの分野、特に太陽光の国内案件が大量にFIT関係で出てきたので、国内案件でプロファイを組成する例は増えていますが、私の知識では基本的には国外のエネルギー・インフラプロジェクトなどがメインストリームだったと思います。

まぁ、国内のプロファイによる太陽光案件もそろそろ活気が収まってくるような気がしますが。

 

そのため、プロファイに携わっている業界は国内で言えば、

「商社・鉱山会社・石油会社・再エネ企業などの事業会社」

「大手メガバンク政府系金融機関のレンダーサイド+国内の再エネ関係でのリース会社」

「たまにEPCコントラクター」

くらいな気がします。レンダーサイドでは、再エネ関係が増えてきたため、メガバンク以外でもプロファイ実務者が増えているというケースは多いようです。

それでも、メガバンクなどではストラクチャード・ファイナンス部の人+関係する営業部の方くらいがメインで、人数も銀行の比率から言うと非常に少ないという話を聞いたことがあります。そういう中で非常に狭い業界なんですよね。

海外の案件だと、普通にゴールドマン・サックスとかソシエテ・ジェネラルとかの外銀やプライベートな投資会社が名前を見ることは結構ありました。。

私は英語が得意ではないので、海外案件はそもそも会議が辛かった。。。

 

そのため、事業会社でプロファイの経験があるといっても多種多様で、エネルギーの関係でも、石油・金属・再エネ・プラントといろいろとあり、各業界ではその発生する問題は結構違ったりしている印象です。

例えば、再エネ関係は物理完工や操業完工がほぼ100%成功するようなイメージな一方で、金属開発では鉱床によってプラントの設備が結構違ったりしますし、当初想定していた品位の鉱石が採掘できなかったりするため、それによって操業完工が難しいし、完工後も、品位の悪化などでCFが回らないというケースは結構耳にする印象があります。

 

とそういう話はさておき、

この本はプロファイの基礎本としては悪くない本だと思います。

ページ数が新版と比べて少ないため、プロファイの大枠を掴むには結構簡単に内容把握できます。

私がプロファイを新人に教えるときは、この本を交えて教えたりしていました。

各人の扱うプロジェクトによって大きく中身や流れは異なりますが、これを一冊読んでおけば、とりあえず、プロジェクトスキームの面談メモ作成などは先輩方のサポートがあれば対応はできるでしょう。

 

 

内容の実務的な話でいうと、旧版はドキュメンテーション部分(契約書の作成に至る検討や交渉作業)とプロファイ組成過程が完全にさらっとしています。

・プロファイの組成担当者は、事業会社の場合、往々にして、少なからずドキュメンテーションの作業主体者となることが多く、その流れやリーガルとの関係性は知っておく必要があります。

・プロファイ組成過程では、リーガルだけでなく、技術・環境・財務などのアドバイザーにいろいろな業務を発注するため、そのあたりのところがほぼほぼあっさりしているのもいただけません。

 

ただ、これら2つの項目は新版で完全に補充されています。

この著者はさすがプロファイのプロであって、感服します。特にドキュメンテーションの部分が新版はかなり詳しく書いてあって良いです。

 

 

何れにせよ、新版は旧版の1.5倍くらいのページ数もあるため、旧版でプロファイのフレームワークを掴んだ上で読むほうが良いような気もします。

かといって、2冊買うのも高いんですけどね。。。

 

ちなみにこれは転職的な話ですが、

銀行にいるプロファイ組成者含めて、プロファイ経験者は大概のケースでその後プロファイで食っていく人が多いような気がします。

レンダーサイドにいるか、事業会社にいるかは各々の判断によりますが、それだけプロファイの実務経験者は絶対数が少なく、経験・知識・英語力が問われるものであるため、一生モンの食い扶持になると思います。

レンダーや商社は仕事がかなり忙しいですが、かなりいい給与が出ていますし、知人とかだと30歳過ぎて普通に1,000万超えてる人が多数な気も。

なので、運良くプロファイの経験に携わることができた人はその道で食っていくことをおすすめします。

 

ちなみに私はプロファイを武器に食っていきたいと思ってますが、明らかにレンダーのメガバンクや外銀の方の働き方は、

無敵スーパー超人!72時間働けますか!?

みたいなこち亀の中川の父親みたいな方々なので、そういう方面には行きたくないです。。NY時間と東京時間の時差なんて関係ない感じでメールが飛びまくります。

多分、外銀とかいくと2,000万くらいは普通に行きそうな気が。。。

 

プロジェクトの最初から最後まで見届けられるような、そういう事業会社で私は働きたいです。。。給与はそんなにいらないから。。。