ひたすのなかの島々

30代の独身男性が投資信託積立と貯金箱とαを綴る。最近は英語勉強記録になりつつあります。

新書:清水幾太郎著「本はどう読むか」

こんにちわ、ひたすです。

久々にこういった類の本を読みました。思考の仕方、メディアとの付き合い方などについては、出版が1972年と古いものの、現代に通じる点が数多くあり、有用な一冊かと思います。

タイトル:本はどう読むか

作者:清水幾太郎

出版社:講談社現代新書

 

本はどう読むか (講談社現代新書)

本はどう読むか (講談社現代新書)

 

 

 

 概要

作者の読書経験を作者の生い立ちから説明し、述べている作品です。この当時、戦前から戦後という読書の大航海時代、本の全盛期で生きている著者が執筆したものなので、内容はかなり的確で、出版当時の1972年時点でTVの問題について論じており、それは現代の、インターネットでの動画配信などが当たり前になった時代でも通じる問題の提起をしていると感じました。

 

目次は下記の通り。

1:私の読書経験から

2:教養のための読書

3:忘れない工夫

4:本とどうつきあうか

5:外国書に慣れる法

6:マスコミ時代の読書

 

特に良かった章は、「2章の教養のための読書」と「6章のマスコミ時代の読書」です。

 

2章では読書のあり方について言及されており、世の中の書物は殆どが下記の3分類にされるとしています。

 

実用書:「生活が強制する本」

娯楽書「生活から連れ出す本」

教養書「生活を高める本」

 

実用書に関係する本はいわゆる仕事に関係あるような書物とか実務的な本、娯楽書は小説、教養書は端的に言えば、哲学書とかそういったものを指していると私は考えました。

私自身のケースで行くと、実用書は大学や仕事の関係でわりと読んでいますが、いわゆる教養書という類のものはほとんど読んだ経験がなく、これからの自分にとっては必要なものだろうと感じます。

 

また、この章では人生論業者に対する批評が載っており、これは現代でいう「自己啓発本の作者やコラムニスト」などだと推察されます。

作者は「人生の大部分の問題は職業の問題である」とし、「職業は社会の中における人間の役割である」(p48)としています。その中で人間の意味は内部ではなく、社会との外的要因によって定義されるものであり、その外的要因の大半は、人間の役割である「職業に起因する」(p48-49)と述べています。

 

確かにそれはそうだと私は強く実感しています。私自身、現状の悩みは新しい職場のことであるし、大多数の人は大学卒業後、およそ職業なるもので生計を立てていきますし、1日の半分近い時間がそれに使われている以上、職業に起因する問題が多くなるのは自明の理でしょう。

私は、安易に自己啓発本で簡単な他人の人生のアドバイスを受けるのでなく、教養書を読み、自己の内的な深化をさせ、外的問題との解決を求めるべきだと感じました。

これには非常に時間がかかる行為でしょうが、将来的には強みとなり、人生設計への基礎強化にもつながるのではと思うところです。

 

 

6章のマスコミの時代では、1970年代のTVなどの放送メディア普及と読書などのあり方について言及しています。

詳しい話は新書を読んでもらうとして、この2つのメディアの特徴としては下記の通りかと思います。

 

放送メディアは発信元で情報を選別し、有利な情報を流し、かつ視聴者はその一方的な情報の潮流に身を置くこと他ならず、一方的な情報の受け身をとることとなる。

読書などの紙媒体のメディアは、一旦本から目を話すことにより、情報の潮流を遮ることができ、一旦の思考を巡らせることができる。

 

結局のところ、作者は「情報への思考性」を説いており、TVやラジオなどの一方的メディアはその思考性が意識的に発揮されることはほぼないとしています。

確かにこれは現代でも通じるところで、よく挙げられる「情報の鵜呑み」はその際たる例かと思います。

現在では、TVやラジオだけでなく、動画配信サービスなどで多くの方が動画を上げていますが、視聴者の我々にとっては、彼らがどういった意図でその情報を流しているか、どういった背景があるかなどは深く考えないのが常だともいます。

まぁ、背景という点でいえば、活字メディアである本や新聞でも同じことが言えますが、これらは作者のいうとおり、目を離せば、一方的に情報が遮断でき、思考を巡らせることができます。

TVにおいても確かに録画したり、TVを消すこともできますが、まぁ私は普通にしてないです。

 

私の経験としては、こういった事象は学術分野でも挙げられることで、私が大学院の修士論文を書く際に教授から、「政治系の書物・論文は作者の政治観が結論に大きく左右されるため、それが客観性のある書物・論文かどうか、自己の研究の参考文献に使えるかどうかはある程度満遍なく、その分野のいろんな作者の書物を読んだ上で、思考を重ねた上で判断する必要がある」との指導を受けました。

これは、作者の清水氏がいうように、情報への思考を求めることと同義だと思います。

 

情報はその情報の発信者の都合のいいように解釈できるように発信されることが多く、発信者の意図や背景、スタンスを理解した上で、初めて咀嚼できるものだと私は思います。

私自身、そういった思考を巡らせることが大切だとはわかってはいるものの、実際に行動することはなかなか難しいんですよね。。

 

とまぁ、結構話がずれたような気もしますが、読みやすい文体ですし、非常に面白いです。

ちなみに、作者は読書会が嫌いだと言っており、かつ本は一気に読んだほうが良いということも述べてました。

最初の方の作者の読書体験はあまり面白みはないですが、2章以降は結構考えさせられる内容だと感じました。なので、私はこの本は一気に読み、かつ感想を書いたほうがいいということなので、このブログで記した次第です。

 

【この新書内で挙げられていた興味を持った本】

 

新版 合本 三太郎の日記 (角川選書)

新版 合本 三太郎の日記 (角川選書)

  • 作者:阿部 次郎
  • 発売日: 2008/11/10
  • メディア: 単行本
 

 

 

エセー 6冊セット (岩波文庫)

エセー 6冊セット (岩波文庫)

 

 

 

新しい社会 (岩波新書 青版 129)

新しい社会 (岩波新書 青版 129)

  • 作者:E.H.カー
  • 発売日: 1963/11/20
  • メディア: 新書
 

 

 

 

ちなみに、私は物分りが良くないため、押井守の名作「機動警察パトレイバー the Movie2」を3周くらいしてやっと物語の背景や立ち位置、登場人物のセリフ回しなどを理解しました。。。映画も3周とすると初めて見えてくるものが結構あるんですよね。

攻殻機動隊SACや2ndGIGとかも一周目では「あ、面白いなふーん。結構意味わからんけど」ってことがかなり多かったので、3周くらいしました。。。

1で10とは言わないまでも、5で10くらいわかるようなちょっと物分りの良いスマートなおっさんになりたい。。。